2.新しい企業再生の枠組み

2.新しい企業再生の枠組み

構造改革を更に加速するため、以下のように、新しい企業再生の枠組みを可及的速やかに実現する。

(1)「特別支援」を介した企業再生

「特別支援金融機関」は、新しい経営陣の下で知恵と工夫を活かし、企業再生を図るため、以下の点に関して経営努力を傾注する。

(ア)貸出債権のオフバランス化推進

破綻懸念先以下債権等について、RCCや企業再生ファンド等に売却することによって、企業再生のプロセスを加速する。その際、RCCによる買取に関しては、必要に応じ財政的措置についても検討する。

(イ)時価の参考情報としての自己査定の活用

破綻懸念先以下債権をRCCに売却する場合には、「特別支援」の枠組みの下で十分な引当を積んだ自己査定であることを前提に、RCCの買取価格である時価を判断する際の一つの参考情報として採用することを検討する。

(ウ)DIPファイナンスへの保証制度

法的整理手続に入った企業について、当該「特別支援金融機関」がDIPファイナンスを担う場合において、再生可能な部分を甦生させるための信用保証制度について検討する。

(2)RCCの一層の活用と企業再生

以下の点に配慮しつつ、RCCへの不良債権売却の促進や企業再生ファンドの活用、再生対象企業に対する政府系金融機関による支援など、企業再生を促進する枠組みを早急に整備・活用する。

(ア)企業再生機能の強化

企業再生機能を強化するため、RCC内における企業再生部門の強化等を検討する。そのための人員確保や政策投資銀行、国際協力銀行などを活用した企業再生ファンドの拡充、企業再生のノウハウを有する商工中金等との連携強化などについては、積極的に対応する。

(イ)企業再生ファンド等との連携強化

RCCは、購入した債権に関しては回収・売却を加速するとともに、企業再生ファンドなどへの橋渡しを果たすことにより回収の極大化を図る。このような観点から、購入して短期間で回収できない案件については、原則として、売却する方向で早急に検討する。

(ウ)貸出債権取引市場の創設

RCC及び政府系金融機関等は、保有している貸出債権の売却を加速することによって、日本における貸出債権の取引市場の創設に努力を傾注する。その際、RCCの貸出債権毎の採算についてより機動的な対応ができるよう、総合的に検討する。

(エ)証券化機能の拡充

RCCは、自らが保有する大量の貸出債権を対象ポートフォリオとした証券化の機能を強化し、実際に資産担保証券の売却を進める努力を継続する。

(3)企業再生のための環境整備

企業を再生する環境を整備するため、政府が目指すのは企業淘汰ではなく企業再生であるとの認識の下、経済産業省、国土交通省などの関係府省との連携をこれまで以上に強化し、以下の施策を講じる。

(ア)企業再生に資する支援環境の整備

不良債権の最終処理と企業の早期再生を支援するとともに、中小企業への円滑な金融の確保に努めるため、税制、投融資制度、商法の特例などについて、実現可能なものから出来る限り早く整備を行うよう、関係府省に要請する。

(イ)過剰供給問題等への対応

過剰供給問題や過剰債務問題に正面から取り組むべく、産業・事業分野が供給過剰になっているかどうか等について政府としての指針・考え方をまとめるとともに、安易な企業再生に政府の「お墨付き」を与えることのないよう適正な基準を定めることを、関係府省に要請する。

(ウ)早期事業再生ガイドラインの策定

企業が自ら事業再生に着手するよう、「早期事業再生ガイドライン」の策定作業を早急に進め、関係者間のコンセンサス形成を図るよう、関係府省に要請するとともに、金融庁も検討に参画する。

(エ)株式の価格変動リスクへの対処

金融機関保有株式の価格変動リスクは、金融機関経営の大きな不安定要因となっており、その存在は企業再生プロセスに不測の影響を与えかねないことに鑑み、日本銀行による金融機関保有株式の買い取りの円滑な推進を期待する。

(オ)一層の金融緩和の期待

企業再生のプロセスを支えるため、一層の金融緩和が行われるよう日本銀行に期待する。

(4)企業と産業の再生のための新たな仕組み

企業・産業の再生に取り組むため、新たな機構を創設し、同機構が再生可能と判断される企業の債権を金融機関から買い取り、産業の再編も視野に入れた企業の再生を進める必要がある。

このため、政府が一体となって、速やかに所要の作業準備が進められるよう要請する。