(1)資産査定の厳格化

(1)資産査定の厳格化

金融機関の資産査定については、これまでにも増して厳格化を図るため、以下の施策を講ずる。

(ア)資産査定に関する基準の見直し

(イ)特別検査の再実施

(ウ)自己査定と金融庁検査の格差公表

(エ)自己査定の是正不備に対する行政処分の強化

(オ)財務諸表の正確性に関する経営者による宣言

 

(ア)資産査定に関する基準の見直し

資産査定の基準については、市場評価との整合性を図るため、以下の措置を講ずる。

① 引当に関するDCF的手法の採用

主要行及び地方銀行・第二地方銀行・商工中金・信用金庫・信用組合において要管理先の大口債務者については、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を基礎とした個別的引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する。

② 引当金算定における期間の見直し

主要行及び地方銀行・第二地方銀行・商工中金・信用金庫・信用組合において、暫定的に定められている1年基準及び3年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行う。

③ 大口債務者に対する銀行間の債務者区分の統一

主要行及び地方銀行・第二地方銀行・商工中金・信用金庫・信用組合について正常先でない大口債務者の債務者区分に関しては、適正な資産査定を実施している先にレベルを揃えるための具体的な仕組みを導入する。

④ デット・エクィティ・スワップの時価評価

株式を上場しているなど合理的に株価を算定することが可能な大口貸出先向けのデット・エクィティ・スワップに関しては、取引の時期を問わず、時価評価を適用することを検討する。

⑤ 再建計画の厳格な検証

再建計画の進捗状況や妥当性を継続的に検証することを目的とした専門家を含む検証チームを設置する。

⑥ 担保評価の厳正な検証

鑑定評価を担保評価に用いている場合には、原則として独立した不動産鑑定士による法定鑑定を用いる方向で検討する。また、鑑定結果とその後不定期に実施する特別検査との結果の格差について集計ベースで公表する。鑑定結果と特別検査の結果の格差については、今後定期的に公表する扱いとし、不動産鑑定士に格差是正を求める。格差が顕著である際には、刑事罰則の適用も視野に入れた体制を整備する。それに連動して、「特別目的会社を利用した不動産の流動化にかかる譲渡人の会計処理に関する実務指針(平成12731日発布、日本公認会計士協会)」を改訂する体制を整備する。

(イ)特別検査の再実施

平成15年3月期について、リアルタイムの債務者区分の厳格な検証を継続する形で、特別検査の実質的な再実施を行う。検査官の優位的立場を利用した金融機関等との癒着・不正については、刑事罰則の適用も視野に入れた体制を整備する。

(ウ)自己査定と金融庁検査の格差公表

これまで実施された金融庁検査を基に、主要行及び地方銀行・第二地方銀行・商工中金・信用金庫・信用組合の自己査定と検査結果の格差について集計ベースで公表する。自己査定と検査結果の格差については、今後定期的に公表する扱いとし、各行に格差是正を求める。

(エ)自己査定の是正不備に対する行政処分の強化

正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が是正されない場合には、当該行に対し、業務改善命令を発出する方針を明確化する。その際には、刑事罰則の適用も視野に入れた体制を整備する。

(オ)財務諸表の正確性に関する経営者による宣言

資産査定を含む財務諸表が正確であることに関し、代表取締役及び取締役全員(監査役を含む)に署名を求めることを検討する。